下仕事筆づくり工程

1. 選毛【せんもう】・毛組み【けぐみ】

筆づくりは、毛の選別作業から始まります。材料を選び、筆先の使う場所に応じて長さや質を揃えます。羊毛を一房ずつ手に取り、選別します。確実に素材を見分けられるようになるには、数十年の経験が必要だといわれる、大変緻密な作業です。
大筆、中筆、小筆、穂先の長短など、造る筆の種類にあわせて材料を組み合わせます。

2. 火熄斗【ひのし】・毛揉み【けもみ】

選別された毛は、「毛揉み」と呼ばれる工程に入ります。毛揉みは、動物の毛に含まれる脂肪分や汚れを取り除き、毛の質を整えます。墨の含みを良くするための重要な工程です。
毛は、一定の長さに切り揃え、籾殻(もみがら)の灰をまぶします。これに、熱した「火熄斗」(ひのし)を当てます。火熄斗をあてる時間や温度は、毛の種類によって微妙に調整されます。
火熄斗された毛を素早く鹿皮に巻き、 毛を折らないように注意しながら丹念に揉み込みます。熱を含ませ、揉み解すことで脂肪分や汚れを取り除きます。

3. 毛そろえ

櫛抜きして綿毛(わたげ)を取り除いたあと、少量ずつ毛を積み重ね毛をそろえていきます。 何度も金櫛をかけて、毛の質を整えていきます。

4. 逆毛、すれ毛取り

毛先を完全にそろえ、半差し(小刀)で逆毛、すれ毛等を指先の感触を働かせながら抜き取ります。良い毛だけを徹底的に選り抜きます。

5. 寸切り【すんぎり】

筆の穂先は、5つの部分に分かれています。毛先の「命毛」、その下の「のど」 中程の「肩」、根元に近い「腹」そして、一番根元の「腰」です。
寸切りは、この5つの場所に応じて毛の寸法を整える作業です。それぞれの部位の寸法を取った寸木を乗せ、毛先を基準にして切りそろえます。
切目が正確に揃うよう、何度も確認しながら徐々に整えていきます。
このようにして部分毎に整えられた材料の毛は、塊(くれ)と呼ばれるかたまりにします。