H19/3/17(土)~4/22(日)
一人の書家が生涯をかけて収集した幻のコレクション時を経ていま筆の里に甦る…
明治三二年(一八九九)に京都に生まれた木村陽山は、二十七歳のときに井上西山に入門、その後、西山の師である山本竟山にも師事してその書を学んだ書家です。また、日本における毛筆研究の名著『筆』(大学堂書店、一九七五)を著した、毛筆の研究家・収集家としてもその名を知られています。
もともと筆に興味を持っていた陽山は、昭和九年(一九三四)の竟山の逝去後、竟山旧蔵の毛筆資料のほとんどを譲り受け、これを基礎として毛筆の収集を続けました。のちに自宅が類焼に遭い、拓本などのほかの収集品を失いますが、毛筆コレクションは別に一括しておいたために難を逃れ、これ以降、陽山はますます毛筆の収集と研究に専念するようになりました。
このような筆の収集・研究に対する陽山の熱意は、『広辞苑』の編纂者、新村出をはじめとする当時の知識人らとの交流をもたらしました。この結果、西園寺公望、富岡鉄斎、竹内栖鳳らの愛用した筆を遺族から譲り受けています。さらにこのコレクションには、熊野筆の源流ともいえる有馬筆や、日本の近代製筆の発展に功績を残した高木寿穎の資料も含まれているほか、筆管に堆朱や螺鈿、象牙彫などの装飾が施された観賞用の筆までもが含まれています。
質、量ともに、世界的にもほかに匹敵するもののない、この「木村陽山コレクション」は、日本文化を陰で支えた筆の歴史を考える上で欠かすことができない重要なもの。このたびの当館での収蔵を機に、約一〇〇〇点のなかから主だった筆と関係資料を厳選し、約三〇〇点を公開します。
■主催 : 財団法人筆の里振興事業団 芸術新聞社 中国新聞社 中国放送
■後援 : 広島県 広島県教育委員会 熊野町 熊野町教育委員会 熊野町商工会 熊野筆事業協同組合 熊野筆伝統工芸士会
■協力 : 広島電鉄株式会社