書筆-まとめ
2009.06.30
●土橋靖子
巻筆がやや書きにくいと感じたのは、毛と毛同士の間に空気が入るからではないか。すなわち、巻筆でない筆では、墨がのりの役目を果たし、空気を入れず、毛がよくまとまるので書きやすかった。
ところが、巻筆では空気が入り、毛がまとまらなかったのではないか。これは毛の原料や長さ、また、巻いた紙との関係なども考えられる。したがって、巻筆だから悪いとはいえないと思う。
●石飛博光
束ねただけの筆は、墨が筆にうまく詰まる。ところが、この巻筆は、毛がほんの先だけであるため、そのほかの部分は毛の弾力とは関係がなく、根元から微妙にしかばねが伝わってこない。巻筆を使う場合には、そのことを意識しながら、筆全体、毛全体が一つのばねを持っているという感覚で書くと、一体感があって書きやすいと思う。
●名児耶明
仮名の筆について、白真の長鋒の巻筆が最適ではないか、との推測をもとに検証してみたが、そのような結論には至らず、逆に、原料、製法、紙などをめぐる新たな課題が出てきた。 筆については未解明な部分が多く、地道にこうした課題に取り組んでいかなくてはならない。
今回は、鹿毛の種類については、白真である可能性が高いことを明らかにできた。このような成果を今後も積み重ねることが求められる。