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フォーラム

2013年「芸術系大学合同交流研修会」

2013.08.21

筆づくりの里・広島熊野を訪ねて ― 職人の町に泊まろう

 

■開催目的
今回2回目となる交流事業には、日本一の筆づくりの街という地域の特性を生かし、「筆職人と筆の未来を担う若い世代の交流」を目的に、これまでに筆の里工房と交流のある、書道、絵画専攻の大学教授にご協力いただき、36名の学生の皆さんに参加していただきました。
この事業を通じて、「作る人と使う人」の相互理解の促進や学校を超えた学生どうしのつながりが生まれることも期待し、次のとおり開催しました。

■8月21日(水)

①開始式・ガイダンス
熊野町観光連絡協議会会長 久保田聡二、熊野町長 三村裕史の開会挨拶。
町長が熊野町観光大使ふでりんをPRした場面では笑いもこぼれ、緊張感も和らぎました。
②館内見学
筆司の家にて、伝統工芸士 南部豊栄さんの筆づくりの実演見学をしました。普段使っている筆が複雑な工程でつくられているのを実感されたのではないでしょうか。
③パネルディスカッション~そうだったのか! 熊野筆づくり
熊野筆製造工程の知恵と工夫について、職人、歴史、化学の視点で、改めて考えてみるパネルディスカッションを開催しました。
まずは、伝統工芸士・實森得応さんと、熊野筆事業協同組合常務理事の荒滝芳彦さんに、原材料の選定・毛組みと書筆の特徴である「自在性」との関わりについてのお話を伺いました。
また、現在奈良・正倉院の天平筆の調査員としてもご活躍中の向久保健蔵さんには墨含みについて、火のし・毛揉みという工程で使う、籾殻を使った脱脂のメカニズムと効果、そして調査中の日本最古筆「天平筆」の原材料と製法を話していただきました。
熊野筆づくりの重要なポイントとして、「天然の原材料や素材の優れたものを使う点」、「さまざまな毛を組み合わせる情報データが残っている点」、そして「熟練の技がある点」があげられました。どれが不足しても、使い心地の良い筆はできないのではないでしょうか。
・パネリスト
進行役:石井節夫(筆の里振興事業団・常務理事)
伝統工芸士:實森得応(最年少伝統工芸士)
正倉院・天平筆調査員:向久保健蔵(元熊野筆事業協同組合青年部長)
熊野筆事業協同組合常務理事:荒滝芳彦
④筆づくり体験
筆司の家にて、伝統工芸士の指導のもと実際に、筆づくりの最終の2工程「上毛巻き」「仕上げ」を体験し
ました。
⑤交流会
熊野町長 三村裕史、熊野町観光連絡協議会会長 久保田聡二、熊野筆事業協同組合理事長 竹田史朗、熊野町商工会長 宗盛勝則が挨拶し、「くまのブッセ」を紹介したり、「ふでりん」の話がでたり和やかな時間がすぎました。
マイクトラブルで話が聞きとりにくい場面もありましたが、参加筆事業所や商工会、先生と学生の交流会を行いました。商工会女性部の特製郷土料理もふるまわれ、「ふでりんクッキー」のお土産もありました。
⑥宿泊
伝統工芸士・筆事業所など筆関連の家庭へ民泊。それぞれのもてなしを受け、語らいあったようです。
■8月22日(木)
 

⑦熊野町内工場見学

熊野町内の製筆現場を1日かけて巡りました。
午前中は、原毛や軸加工の業者や化粧筆製造事業所をめぐり、午後から毛筆や画筆の製造事業所を見学しました。
・見学先
・原毛(熊野筆事業協同組合・山吹商店)
・軸(広島木軸・旭産業)
・化粧筆(竹宝堂・竹田ブラシ)
・日本画筆・洋画筆(松月堂・中村製作所)
・毛筆(一休園・長栄堂・久保田号・穂乃伊堂・甚開堂・仿古堂)
・工芸士(中川敏朗・南崎盛靭・荒谷幸三)
■8月23日(金)
 

 ⑧熊野筆SHIHITSU~書画筆の試筆会

巻筆や水筆など製法による違いや、原材料の違い、サイズ、用途による違い、特殊筆など150本の筆を試筆できる機会をもうけました。書筆会場と画筆工芸筆会場に分かれ、はじめに先生によるデモンストレーションを行いました。その後、参加者は思い思いの筆を手に取り試し書きをしました。
書筆会場では普段使うことのないワラ・イグサ・アダンの実・筆草などの植物筆が意外にも書きやすいということで大人気でした。
画筆会場では、アニメ筆・刷毛・連筆などを試していただきました。初めて使う連筆の面白い書き味に、はまる人が多かったようです。一番人気は、書きやすく、見た目もかわいいアダンの実の筆だったようです。先生方も、特殊筆などを手に取り、楽しんでいらっしゃいました。
~参加者のみなさんへ~
さて、実際に参加していかがでしたでしょうか?
普段使っている筆がどのような工程で作られ、皆さんの手に届いているか、職人さんとの会話や体験などで分かっていただけたのではないでしょうか?
今回の見学や体験などの内容、交流会、宿泊などについての感想、また筆への想いなどをぜひお寄せください。