絵心のある人たちが、折々の風物をちりばめ、手紙をしたためたことから、いつからともなく生まれた「絵てがみ」。絵と文字、そして言葉が一体となって、描いた人の人柄を伝えます。伝えたい事柄を、自分らしく表現するため、その人にあった筆や道具を選ぶことが大切です。
「絵てがみは手紙ですから、やはり相手を思って描くということが一番大事だと思います。身近にあるもの、どこか遠くに行かないと描けないものではなくて、庭に咲いた花を描くとか。あまり気張らないで、身近にあるもの、自分が好きなもの、また相手が好きかな?と思うものを描くといいと思います。どんな形をしているとか、色は何と何が混ざっているとか、葉っぱのつけ方とか、そういうものをよく見つめて描くと、形はちょっと本物に似ていなくても、心を込めて描いたというのはやはり、とてもいい絵が描けるんです。上手に描けなければ絵手紙じゃないんじゃなくて、真心を込めて、字は相手がわかりやすい字を書けばいいと思います」
「筆ですが、小さいものを描くとどうしても小筆を使いたくなりますけれど、ちょっと長めの、水のタンクが少し貯まるような穂先の少し長いものを使うと、墨継ぎをしないで描ける。すると気持のまま、気持が逃げないでその筆を使いつづけられるので、小筆よりも少し穂先の長い筆を使って描くといいと思います」
「彩色用の筆は、隈取り筆の彩色筆がかなり使いやすいです。だいたい大筆は中筆の役目もできます。小さな細かいものは、大筆だと描きにくい場合は、中筆一本、または中筆と大筆一本あるといいと思います。絵の説明は必要ないので、その蜜柑の稔る頃、私はこういうことをあなたに伝えたいとか、林檎の稔る頃・・・ということで、林檎を描いてもその林檎の説明は必要なく、自分の思いを相手に電話で話すぐらいの気持で描けばいいと思います」
「絵てがみは手紙ですから、物をいただいたときのお礼状とかお見舞いの場合は、新鮮な気持のうちに描いたほうがいい絵てがみが描けると思います。いただいたらすぐ、2〜3日のうちに描くとか、お見舞いも本当にお見舞いしたいという気持のときのほうが、活き活きとした絵てがみが描けると思います」