画筆-筆草による揮毫
2009.07.30
筆草(ふでくさ)
筆草は、正しくはコウボウムギといい、浜辺に群生する植物である。筆として使用されたためにこの名があるが、現在では用いられない。
産地は、江戸時代から明治時代にかけては、福岡周辺が有名で、仙台なども知られていた。しかし、現在は砂浜が荒れているので、きれいな形で取ることは難しい。
揮毫実演作品と玉堂の筆法
浦上玉堂の水墨表現として指摘されるものに擦筆(さっぴつ)がある。擦筆は、かさかさかさとした線を連ねる表現で、何かをこすりつけたような筆致を生み、普通の筆が渇筆になったのとは違う味わいを持つ。
このような擦筆を生みだしたのが筆草ではないか。林原美術館所蔵の「伝玉堂所持筆・医薬品」の中に筆草があり、そのような想定を裏付ける。
そこで、山口県の浜で採取された筆草を用いて、擦筆が顕著な玉堂筆「酔雲醒月図」の模写を試みることにする。
採取された筆草
筆草の描き味(斎藤南北)
描きづらい。墨を含む場所がなく、墨が続かない。筆とはまったく別のものという感じである。きちんとしたものを描くためのものではなかったと思う。
だが、玉堂の絵はこれで描けると思う。恐らく玉堂は余興で使ったのではないか。