画筆－概説

水墨画の線と筆（島尾新）

線と筆の関係

水墨画の線と筆は、安易に対応するわけではない。水墨画は、単純だが多彩な表現が可能であり、それは筆・墨・硯・紙の原料や種類が多様であることに起因する。筆についても、いわゆる「画筆」という道具があったわけではなく、筆があり、それを工夫して書にも絵にも使っていた。

原料としては、書筆と同様、動物の毛に加え、藁、筆草、檜、竹などの植物があり、極端にいうと何でもありえた。このように、筆一つをとっても多様であり、さらにその他の要素が複雑に組み合わさって水墨画ができる。したがって、要素の一つとしての筆の種類と、画風を単純に結びつけることは難しい。